魔の手
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作治には自信があった。
その気になればいつでも女をものにすることができると思っていた。出所後すぐにそうしなかったのは、少なくともある程度の時間を必要とするからである。 作治は悪知恵は働き、また、結構緻密に物事を計画する性格であった。 女性を騙すのにも一定の方法を考え出していた。世のドンファンが自然と使っている方法ではあるが作治はそれに論理付けをしたり、方法を細分化りしたりしていた。 先ず、相手を選ぶことである。これには2つの意味がある。一つは、作治に騙されやすいこと、二つ目は金をもっていることである。 次に相手にアプローチをすることである。これにも自信があった。もって生まれた、口の軽さと物怖じしない性格がものを言った。 兎も角、女を口説くには、羞恥心を捨て去ることに尽きる。恥は男の勲章、ダメもとでアタックしまくれば良い。 どんな色男でも10人に9人は失敗する。自分などはおそらくもっと失敗するだろう。しかし、100人に一人ぐらいは成功するだろう。という事は一日20人の女に声をかければ5日で誰かをものにできると計算していた。 女は基本的に受身だから、変な人に騙されないぞと言う気負いがあるが一旦それを取り去れば思いのまま。 良い人が世の中で生き残っていくのではない、こと女性に関しては、良い人は女性には相手にされないのだ。品行方性なのが良いが品行方性にしていれば最後には女性から相手にされなくなるのだ。もちろん女性は品行方性で優しい人が良いと言うがあれは嘘だ。優しさなどは100害あって1利無しなのだ。優しさなどあってはいけない、しかし、優しく見えなければならないのだ。ちょっと危ないのが女性から見て魅力になるのだ。自信を持って言った言葉は嘘でも本当になり、自信のない言葉は、どれだけ真実を言っても嘘にしかならないのだ。少なくとも2人の間では。作治は基本をそう考え実行に移すことにしていた。 田中ハルはデパートで買い物をしていた。 「可愛い子犬ですね」 いやみのない口調で、にこやかに作治はハルに声をかけた。ハルは突然の声に驚いたが、犬を誉められ悪い気はしなかった。「ええ、可愛がってるんです」 「ペキニーズですね、僕も飼っていたんですよ。でも死んじゃって。今でも同じ種類の犬を見ると懐かしくて」 「そうなんですか」 「よろしければ抱かせていただけませんか」 「良いですよ」 ハナは今日一日のことを思っていた。久しぶりに話をしたと思った。見るからに恰幅が良く包容力がありそうに思えた。会社の社長という。娘時代に戻ったように、うきうきした気持ちになった。 明後日にペットショップに付き合ってほしいと頼まれていた。 約束の場所に作治は待っていた。 ペットショップに行きそれから食事をした。帰りにアパートまで送ってくれた作治をハナは部屋に招き入れた。作治は歳を感じさせなかった。 作治はほぼ毎日顔を出すようになっていた。ハルは3年前に先立たれた夫に尽くしてるかのように作治と接した。 どちらからとなく「結婚」の話が出て、二人は入籍した。 作治にとっては赤子の手をひねるより簡単だった。 |