絶 望
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ハナは絶望の淵にあった。聡一の家に戻ることはできなかった。と言っても一文無しになっているのだ。聡一にとっても寝耳に水の話なので今すぐにハナを呼び寄せる訳には行かなかった。ハナが明美を嫌ってるように明美もハナをが嫌っているのだ。
「かあさん明日また来る」と言って聡一は帰って行った。聡一は明美と相談してからハナをどうするか決めたかったのだ。 一人残されたハナは、誰かに話を聞いてほしかった。愚痴を言いたかった。 そうだ「小泉の婆さん」がいる。話を聞いてもらおうと思った。彼女は75歳になるが結婚もしたことなく、半年前まで同じアパートの下に住んでいたのだ。いつも遊びに来ていたから作治も知っていた。 小泉の婆さんなら今の状況を何でも話せると思った。 小泉は一人住まいだし、日が暮れるまでまだ時間があるので、すぐに行って話せる思った。 小泉のアパートはハナの住む所から少し離れていた。どういう訳か半年前急に転居してからは小泉からは殆ど連絡がなかった。しかし、ハナからはたまに連絡は取ってたし、他愛のない話しながら何でも話せると思っていた。 バスを乗りついて、ハナは小泉のアパートに着いた。一通り挨拶をしてハナは部屋に入った。 「うちの人のことなんだけど、暫く帰ってないの」 さすがに、全財産を持ち逃げされたとはすぐには言い出せなかった。「どこかこころ当たりはないの」 「うちの人の知り合いって私、誰とも会ったことないし、探しようないの」 「・・・・・・・・」小泉は何も話さなかった。 「それでね、私にくれた預金、あれ嘘だったの」 「・・・・・・・・」小泉の様子がおかしかった。何も話さず、目はハナを凝視していた。その様子にハナは驚いた。 「どうしたの」と聞いた。 暫くの沈黙の後に、小泉は口を開いた。「別れたんじゃなかったの」「え、なんのこと」 「あなたと、作治さん、去年別れたんでしょ」 「え、どう言うこと」 「いつ復縁したの」 「何言ってるの、一度も別れたことないわよ」 「だって、私に別れたって言ったのよ」 小泉の話はこうだった。半年前、作治が小泉に今のアパートを紹介してたのだ。 そして、小泉にはハナと別れたと言って日中小泉のアパートに頻繁に来ていたのだ。つまり、ハナと暮らしているうちから小泉と作治は付き合っていたのだ。 ハナはここでも開いた口が塞がらなかった。 (もしかしたら小泉は作治とグルになっているのではないか)一瞬ハナはそう思ったがそれは間違いとすぐに気がついた。小泉のうろたえようが尋常じゃなかったからだ。それに、もしもグルなら作治と付き合ってることなどを言うはずがなかった。黙っていれば知られないことだったのだ。 「私の預金が無くなってるのよ」ここで初めてハナは全財産を取られたことを話した。今となっては、小泉も騙されていたのだ。何も隠す必要はなかった。 小泉は何も話さなかった。けれど、冷静さは完全に失われているのは目を見て分かった。だんだん興奮の度合いが増してきてるのがハナには分かった。あまりのショックで言葉が出ないのだ。 「土地」「私土地を売ったのよ。一緒に住むために家を建てると言ったから土地を売ってお金を渡したのよ。」搾り出すように小泉は話した。 全財産の土地。地方の土地ではあるけど、1,200万円で売れたと言う。 「最後に作治と会ったのはいつなの」ハナは聞いた。 「一週間前よ」 一週間前と言えば作治がいなくなる前の日である。それ以降は全く会ってないと言うのだ。 「騙された」「騙された」何度も小泉は唸るように呟いた。 驚きを超えてハナは呆れていた。不思議と冷静さを取り戻していた。おかしな事になったと思った。自分がぐちをこぼそうと思ったのに逆に慰めているのだ。それ程に小泉のうろたえようがひどかったのだ。 結局、ハナと小泉は作治に騙されて一文無しにされたのだ。まさに身包みを剥がされたのだ。ハナは子供のところに行くことはできないし、また、小泉は天涯孤独だった。結婚もしたことなく、親の残した財産で今まで75年間暮らしてきたのだ。 それから3日経った。作治からはハナの所にも小泉の所にも連絡はなかった。青木と言う昔作治が世話をしたという男のところにも行ったが、居所がわかるよりも作治の素性を聞かされた。 |